ギリシャ経済・財政危機 ECBは国債の購入や融資延長に走るか(2)

ECBはフランクフルトに本部を置かれていることからみて、ドイツ
中央銀行の影響を強く受けていることがわかる。
いわゆる 「ブンデスバンク」 という名である。
余談だがサッカーの “ ブンデスリーガ ” と区別してもらいたい。


このことからわかるように、ユーロ圏はドイツの影響を一極集中さ
せることを抑えるため、2003年から8年間の任期という条件で、
フランス出身のジャン・クロード・トルシェ氏を総裁にした。
先代オランダ出身の総裁と同じく、安易な金融緩和をヨシとしない
人物だ。
しかし去年のギリシャショックから始まった一連の欧州危機は、
欧州の伝統的な政策をついに揺るがしてしまった。
その政策こそ、国債購入だったのだ。


2010年5月の欧州危機後、ドイツはギリシャに対し、一国だけで
2兆円以上の援助を決定した。
まさにドイツ国民の血税である。
メルケル首相がドイツ国民から、一気に支持を落としたのは言うま
でもない。
しかしドイツ政府はこの直後、今回の危機を生んだ責任と後始末
をECBに押しつけたのである。
それがECBによるギリシャ国債の購入であった。
中央銀行として格好の悪い姿を世界中に曝け出してしまったのだ。


こういった恥を映し出したECBのやり方に、反対をぶちまけたのが、
次期ECB総裁として本命候補に挙がっている現ブンデスバンクの
ウェーバー総裁だ。
トルシェ総裁の国債購入を痛烈に批判している人物である。
危機を先延ばししたいトルシェ総裁と、抜本的な大改革を急務とし
たいウェーバー氏の考えには隔たりがある。
もしECBの総会でウェーバー氏が総裁に就任すれば、これまでの
金融緩和策の大転換が起るものと思われれる。
ギリシャアイルランドは一気にデフォルトに陥るだろう。


ところで我が国では、日銀による日本国債購入といった金融緩和
も指摘されたが、日本の国債は世界的な信用が大きい。
米国FRBによる米国債購入でも、現時点では日本国債と同様に
一定の信用はある。 (もちろんこれからはジャンク債になるが. . .)
ところがギリシャ国債アイルランド国債といえば、投資不適格級
とされている最低ランクの国債である。
金融の安定化を目指すつもりだろうが、国債価格がどんどん下落
すれば、逆に不安定感もどんどん強まっていくのだ。
今、まさにその通りに進んでいる。


しかしそこはECBだ。 よくわかっている。
実際のところ日銀やFRBと比べてみても、まだそれほどPIIGS諸
国の国債を購入していない。
国債購入額は去年5月から年末で、まだ730億ユーロ
日本円で8兆円といったところだ。
秋口からみて3兆円ほど増加したが、ユーロ圏全体の財政赤字
からみて、せいぜい2割程度しか購入していない。
つまり情勢が万々が一好転すれば、再び購入する余地が大きいと
いえる。 (しかし好転の可能性は低い)


日銀の場合、毎月1.8兆円の国債を購入している。
年間でいえば22兆円だから、1年間の財政赤字の5割に相当する。
米国FRBも、今年6月までに9000億ドルもの長期国債を購入する
予定であることはすでに書いた。
これは日本より状況が遥かに悪化しており、同期間の米国財政赤
字にほぼ相当するものだ。
しかも米国債は全体の半分が、海外の国や投資家が引き受けてい
る。
日本よりヒドイ経済状態なのに、ブッシュ減税の延長などやってい
る状況でないはずだ。
間違いなく国家的大惨事(デフォルト)に向けて突き進んでいる。


とにかくギリシャの年金受給開始年齢は10歳以上も上がったし、
消費税についても19%から23%に引き上げられた。
公務員給与も凍結させられる羽目になった。
こういったことが同じく、アイルランドポルトガル、そしてスペイン
も直面することになるだろう。
そしてこれらのジャンク債を多く保有し、且つ売却できないドイツや
フランスも、いつかは波及してくるという運命になる。
最後に、ECBは国債購入額(730億ユーロ)の内訳を公表してい
ない。
ストレステスト同様、不透明感や疑惑に満ち溢れている。



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