エジプト経済 失業率も悪化。デモの拡大で、ムバラク政権は崩壊か

30年間もの超長期政権に居座っているエジプトのムバラク大統領。
エジプト国民は同大統領の辞任を求め、デモを拡大させている。
チュニジアから飛び火し、今ではヨルダンやイエメンまで自国政権
の不満からデモが起こっている始末だ。


エジプトの経済規模は、日本でいえば静岡県と同程度。
福岡県の経済力にも及ばない。
観光業が主な産業で、観光名所については今更言うまでもない。
欧州をはじめとして、年間1千万人以上の観光客が訪れている。
観光収入も年間8千億円を超えている。
しかしエジプトもギリシャ同様で、観光業以外はコレといった立派な
産業はない。
その他といえばスエズ運河通行料や、海外労働者からの送金がせ
いぜいといったところか。


国土の95%は砂漠で、農業も多くの輸入に頼っている。
主食のパンで使う小麦にいたっても、5割を輸入に頼っている。
面積も日本の2.5倍を誇っているが、資源も乏しい。
2008年の食糧危機にはロシアからの小麦輸入が停止し、デモが
発生。
また翌年の豚インフルエンザが蔓延した時には、飼育している多数
の豚が殺処分されたこともあり、その日暮らしの国民は世界情勢に
振り回されやすいといっていい。


こういった国の事情だから国民の生活は一向に良くならない。
2009年の失業率は平均で9.4%。
2007年や08年と比べても悪化している。
また政治体制も独裁的で、大統領が立法・行政・司法の三権にお
いて権限を有している。 また軍の最高司令官でもあるのだ。
さらに憲法・法律上、副大統領のポストが存在するにもかかわらず、
同国大統領は長年空席のままにしていたという。

まさに日本の隣国と同じではないか。


また通貨の慢性的な弱さもインフレを起こしやすい国だといえる。
1981年に当時のサダト大統領が暗殺されたが、翌82年に筆者は
エジプトを訪れた。
暗殺された後に建てられた記念碑で、軍隊の人と一緒に快く写真を
撮ってもらったことを覚えている。
その当時の為替相場だが、1エジプト・ポンドが約300円。
それが今ではナント、たった14円まで価値が下がっている。

ロシアの通貨ルーブルも負けず劣らずビックリである。


世界的金融危機から輸出が鈍化しており、去年は欧州や米国とい
った主要輸出先に対し、前年同期比2割〜6割も減っているのだ。
これはもう頭うちどころではない。
今後は海外からの投資拡大を狙っていかなければならない。
エジプトを通して、アフリカ全土への流通網を図るべきだろう。
日本の家電大手東芝は、エジプトの家電大手と合弁で液晶テレビ
の製造会社を設立し、今年3月から操業をはじめる。
こういった投資が現地の雇用を生んでいくのだ。


デモが拡大すれば観光へのダメージも大きい。
しかし庶民も現政権の崩壊を一番望んでいるわけだから、退陣が早
ければ、生活もいずれ元に戻る。
今年9月には大統領選挙が控えている。
しばらくは世界的な観光立国から目が離せない日が続く。



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