フランス ギリシャ国債権者・イタリア銀行債権者として...

現在のユーロ圏経済・財政危機は当然、債権者国側にも責任がある。
その代表国といえば、フランスだといえよう。


金融危機までのギリシャ国債最大保有者、そしてイタリア銀行債権
の筆頭国なのである。
今はこういった資金の回収をフランス企業などが、急ピッチで進めら
れている。


イタリアの30年超長期国債の利回りが、ユーロ加盟後の最高水準
に達している。
先月ECBがイタリア国債を購入した直後は、全般的に利回りが低下
していたのだが、ここへきて再び急上昇している。
フランスが一気に回収しているからに他ならない。


そしてギリシャ国債の最大保有国もフランス。
フランスによるギリシャ国債売却により、ギリシャはこれまでに何度
となく危機を迎えている状況。
またタッチの差で保有額の多いドイツも、資金回収を急いでいる。
皮肉であるが、結果的にこういったユーロ圏の大国は、決して返済
されることがない援助をしなければならないという運命だ。
表向きは「融資」であるが、実態は「無償資金援助」といっても過言
ではない。


フランスはユーロ安によって、ドイツほど輸出の恩恵は受けない。
GDPにおける輸出の割合は約3割に上っているが、ほとんどが同じ
ユーロ圏や米国向け。
だから通貨安競争をしている国や地域では、為替による利潤は生ま
れにくいといえる。
フランスは、圏内弱小国への具体的で責任ある対応を急ぐべきだ。


また同国は世界一位の外国人観光客の受け入れ大国でもあるが、
世界経済が萎縮してしまえば、訪れる人は一気に減るだろう。
そうなれば店頭に陳列しているブランド品購入額も減っていく。
また世界的な美術館を見学する人も落ちるだろう。
これが直接雇用にも響くのだ。
今年6月には東京で、日本人のフランス観光を促進するセミナーが
開催されていた。


フランスの失業率は1年前からはずっと9.7%で推移していたが、
ここ2カ月間は徐々に悪化してきている。
2011年第2四半期のGDP成長率は前期比0%。
これは前期の+0.9%から大きく減速した。
またフランス政府は先月末、110億ユーロ規模の財政赤字削減対
策の一環として、国内企業や高額所得者からの増税を発表した。
消費が伸び悩む中、経済の活性化はもはや期待できないだろう。


スペインも今月2日、財政赤字と政府債務残高に上限を設ける憲法
改正案を可決。
無闇な赤字の垂れ流しに、断固とした措置を講じていきたいという
同国政府の危機感が如実に表れている。
しかしこれによって実態経済はますます悪化していく。


ここへきてギリシャのユーロ圏切り離し問題、イタリアのデフォルト説、
ドイツの旧マルク通貨復活説といった話が出てきた。
まさにユーロ圏全体にとって暗い話ばかりであるが、ここは思い切っ
て期限付き・条件付きの切り離しやデフォルトも視野に入れておくの
も手だろう。
格付け会社の一斉見直しも結構だが、実体経済の悪化はもう避けら
れない。
ユーロ安であるが、企業などの海外進出を加速させることも考えて
いく必要もある。



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