ポルトガル経済・財政危機 スペインからドイツ、フランスへ波及

今現在ユーロ圏で一番危機を迎えているのは、PIIGS諸国であることは
間違いない。
一方欧州連合(EU)諸国でみれば、英国が最も財政事情が厳しいといえ
るだろう。
何しろ英国はGDPの3.4倍もの対外債務を抱えているのだから、いつ
なんどき爆発してもおかしくない状態だ。
果たして4月29日に行われる皇族の披露宴には、かつてのようにお祝
いムードで包まれるかどうか心配である。
日本での地震直後、ユーロやポンドはどんどん下落している。


実際のところユーロ圏内ではドイツやフランスといった大国が、イタリアを
除くPIIGS諸国に巨額なマネーを投資している。
よって最終的には英国同様、最後にはドイツもフランスも経済危機を迎え
る運命にあるのだ。
ユーロ圏内での各国による投資関係をみてみると、ギリシャやアイルラン
ド同様、これから春にかけて大きな問題に直面していくとみられるのは、
ポルトガルである。
同国の10年債はもちろんだが、5年債や2年債といった短期債も急激に
利回りが拡大しているのだ。


このポルトガルに対し、最も多く投資しているのがスペインだ。
スペインは外国に対する融資の8割をポルトガルに貸し付けている。
つまりポルトガルの危機は、スペイン危機に直結するのである。
ポルトガル国債償還時期は迫っている。
来月4月にはIMFやユーロ安定基金から援助を受ける可能性が高い。


しかしユーロ圏の問題はこれだけで終わらない。
そのスペインに対してドイツやフランスが桁違いの融資を行っている。
これが今後こういった2大国に火種が移っていくのだ。
ドイツは先に表面化したアイルランドと、今後危機が訪れるスペインに対
し、それぞれ1000億ユーロ以上の債権を抱えている。
この金額は、2009年のドイツの財政赤字額794億ユーロを軽く超える
規模だ。


ドイツにとってギリシャポルトガルの経済危機は、直接的には軽微であ
ろう。 あくまでも直接的には。。
一方でフランスは、ギリシャへの貸し付けが多かったので、去年5月に起
こったギリシャ・ショックは他のどの国よりも焦っていた。
サルコジ大統領は、ドイツがギリシャへの支援をしなければ、ユーロから
離脱すると発言したくらいだ。
ただしそのフランスも若干ではあるが、ギリシャより多くの融資をしてきた
のが、何を隠そうスペインなのである。


少々ややこしくなってきたが、これから本格的に起こってくるポルトガル
危機は、すぐにスペインに波及し、それが連鎖となってドイツやフランスに
まで及ぶといった寸法だ

PIIGSがこけたらドイツもこける. . . といった方程式がすでにでき上が
っているのである。
リーマンショック前までは、ドイツの失業率は11%台だった。
しかし今ではユーロ安の恩恵を受け、毎月のように改善している。
最新のドイツの失業率は6.5%。
まさに中国をはじめとした新興国サマサマであろう。


ドイツはアイルランドとスペインを合わせると、2600億ユーロも貸し付け
ている。
世界金融危機は当事者だけでは終わらない。
経済基盤がぜい弱な新興国市場が崩壊すれば、輸出に大きく頼っている
ドイツにとって影響は避けられない。 日本の比ではないのだ。
米国もスペインとアイルランドに多額の資金を振り向けていたので、今後
は海を渡って2番底が拡大してくるだろう。
今週に入って対円でドル安傾向が続いているが、それ以上にユーロが安
くなっているので、思うほどドル安は進んでいない。
為替市場でドルとユーロは反対相場として動くからである。


とにかく忘れてはいけない。
アイルランド危機が表面化してすぐに、米国による量的緩和策第2弾が決
まったことを。

理由はもちろん、PIIGS諸国に巨額な投資をしている自国の金融機関を
救済するためだ。
米国全体の景気浮揚対策なんてものではなかったのだ。
しかも驚くことに、第2弾の資金額6000億ドルの半分が金融機関に入っ
ていったという。
つまりスペイン危機が表面化すれば、第3弾、第4弾と実施される。
これまでブログに書いてきた通りになる。



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