パキスタン国民は平和 政治・経済は混迷 再び大恐慌が訪れる?

何ということでしょう。
約2週間程滞在したパキスタンでしたが、とにかく人々は陽気で平和
そのもの。
一度も危険を察知したことは皆無でした。
日本をはじめとした西側諸国に伝わってくる報道は、悪質そのもの。
捏造に包まれた国際テロリストの殺害、そして頻発しているといわれ
ている自爆テロも無く、大部分が誤解に満ちているとしか思えません
でした。


ビン・ラーデンの暗殺現場といわれる場所の近くまで行きましたが、
まさに平然としていました。
官公庁の職員やビジネスマンも笑顔で溢れ、何事もなかったかのよ
うな日常生活ぶりでした。
まるで作り話であったかのように、一般住人も冷静沈着そのものだっ
たのです。
高級ホテルでは出入管理は確かに厳しかったのですが、今に始まっ
たことではありません。
その時はメディアも多国籍軍も全く見かけませんでした。


確かにパキスタンは経済的には非常に貧しい国です。
一人当たりのGDPはインドとベトナムと同じ。
国力から考えると、人口が多いインドよりずっと下です。
ベトナムは今後、日本などから支援が期待できるので、近い将来には
パキスタンを凌ぐのではないでしょうか。
政治についても予想通りといったところです。
過去3度、インドとの戦争(印パ戦争)で、両国の人々は事実上行き来
できない状態になっています。
パキスタンの一般人はインドへ行ったことはなく、インドの庶民において
パキスタンを訪れたことはありません。


もちろん過去に起こった大きな戦争だけではありまでん。
最近では1995年と99年に勃発したカシミール紛争においても、両国
の関係を更に悪化させていきました。
そして記憶に新しい2008年秋、イスラム教徒によってインド・ムンバイ
のタージマホテルで起こった同時多発テロ事件。
悲しいことですが、両国ではいつも忘れられた頃に何がしかのドンパチ
が起きてしまいます。


こういった大事件があったにも関わらず、両国の国民はお互いの相手
を中傷したりするようなことはありませんでした。
パキスタン滞在中、出会った人々にインドの印象を聞きまくったのです
が、ほぼ同胞といった感覚そのもの。
つまり両国の関係悪化はひとえに、政治(家)がもたらしたのです。
だからビザの発給が今でも事実上停止状態。
隣国にもかかわらず、観光でも入ることができないのです。
もしかしたら政治的には、日本における中国やロシア以上の外交の溝
があるのかもしれません。
残念なことです。


経済については過去何度か投稿しましたが、やはり困窮しています。
リーマン・ショック後のパキスタン経済は、通貨の暴落からインフレが
進み、これによって外貨が大きく目減りしました。
09年のインフレ率は、前年比25%上昇というとんでもない大きさ。
これは1947年の建国以来最大のものでした。
さらに同国最大の株式市場、カラチ証券取引所でも、株価は45%とい
う大幅下落。
同通貨であるパキスタン・ルピーも、対円で2割以上も下落しています。
現在パキスタンは、IMFや日本などからの資金援助で何とか持ちこた
えているという現状なのです。


とにかく私が町中や観光名所を訪ねても、外国人らしい人に当たるこ
とはありませんでした。
やはり西側から烙印を捺されている、テロ支援国家というレッテルが
全体の印象を悪くしているようです。
やはりメディアが消極的な報道ばかりしているのが原因でしょう。
一方でパキスタンの良い面はほとんど報道されない。
私が過去何度も言ってきたように、やはり日本のTVや新聞は正しい
ことを伝えようとしません。
同国の危険な面(つまり偏向報道)ばかり伝えているのです。
だからあれだけ世界的なインダス文明の観光遺跡
ガンダーラ」 「ハラッパ」 「モヘンジョ・ダロ」 があるにもかかわらず、
日本人をはじめ、同国を訪れる外国人は非常に少ないのです。


けどこれはある意味で東日本大震災と事情は同じものです。
原発事故が起これば脱原発を声高らかにする人が出てくるのですが、
飛行機事故や自動車事故が起きても、脱飛行機や脱自動車を唱え
る人はいない。
この違いは何なのでしょう?
一体どちらが死亡事故を多く出しているのでしょうか?
以前、火力との比較で投稿した通りです。


そして日本政府は外国向けに日本産農産物の輸出、観光を積極的に
進めていますが、なかなか海外には素直に受け入れられない。
しかし当然といえば当然でしょう。
どんなに自分たちの国が大丈夫だと言い放っても、デモから革命が起
きたエジプトやチュニジア、中東諸国へ今行こうと考える人は少ない。
まさにパキスタンが持つ偏見と同じなのです。
風評被害というものはなかなか収まらないのは事実です。


文化面についてですが、西側諸国の文化はなかなか入ってきません。
インドでは日本のアニメが連日放送されていましたが、パキスタンでは
全く見かけませんでしたし、映画においてはせいぜい隣国インドの映画
ばかり。
両国は政治的に問題をかかえていますが、映画については問題なく取
り入れているようです。
かつて両国は英国の植民地であったし、政治と違って文化は似通って
いるからなのでしょう。
しかし両国が持つプライドと威信は予想以上。
どちらも相手に負けてなるものか!! という熱意が伝わってきます。
(写真はワガ―国境の式典終了後にて。向かって左が筆者)


さて同国滞在中は衛星放送で、ギリシャ情勢や英国公務員による大規
模なストの報道が伝わってきました。
海外メディアはいつものことながら、私は現地で英国BBC放送ばかり
視ていますが、BBCという公共放送でも同国経済の衰退について素直
に伝えています。
ギリシャ危機についても、いかにユーロ圏が対応に苦しんでいるかが
わかります。
とにかくどんなに苦しくても、一度加盟を果たした国を切り離すことはで
きないという現実に直面するからです。


もう墜ちたところまで落ちた. . . といわれるパキスタン経済ですが、
欧米諸国の経済如何によっては、今後も混迷を深めていくでしょう。
資金の回収、金利の急上昇が訪れれば無傷ではいられません。
ただでさえ先進国などから投資が少ないのですから、再び通貨危機
が訪れ、そしてインフレが進むと、冷静なパキスタン国民でさえ暴動に
発展するかもしれません。
今はまさにその一歩手前といったところでしょう。



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