スイス銀行(UBS・クレディスイス)が破綻の危機

スイスの危機も大変深刻だ。
そもそも金融国家一辺倒で存在感を示してきたスイスの銀行資産
は非常に大きい。
そしてこの資産の大部分は外国からの流入であり、今回資金の
流出が起こることで、膨大な額の損失を発生させることになる。
とくにUBSは金融機関の中でもサブプライムローン関連の損失
が多いと言われており、業績の悪化が今でも顕著である。
スイスも破綻国家に近い状態になってしまった。


しかしスイスの場合、頭痛の種はこれだけではない。
人口比率における富裕層では、世界中で最も多いとされる日本で、
なぜかあまり報道されない危機が他にある。
それは今回の金融危機を受けて、発祥地の米国が打ち出した方針
に、スイスに対する不正資金と不透明な資金の封じ込めである。


結論からいえば、スイス政府は300年に渡って守ってきた銀行
顧客情報を匿名を条件に情報開示するというものだ。


人口が760万人のスイスで、GDPにおける金融業の割合は、
12.5%。
しかしUBSだけでも同国GDPの4倍に達してしまっている。
銀行全体で見てもGDPの約6.8倍にも膨れ上がっている。

UBSは米国内に多くの支店や法人を持っている為、米国当局に
逆らえば、米国内での営業活動が一切できなくなってしまうのだ。


スイス側に切り札は残っていなかった。
銀行の秘密主義を放棄することになれば、銀行業界全体の規模は
半分まで縮小する。
もはや海外の顧客はスイスの銀行を無理に選ぶ理由はなくなるし、
現在ジュネーブで営業している外国銀行も、スイスに居座る理由
がなくなる。


今回の顧客情報開示の争いで、スイスからの資金がますます流出
してしまうという危機がはらんでいる。
UBSの破綻が起これば、永世中立国初の国家破綻に陥ってしま
いかねない。


ついにUBSは4450口座の情報開示に合意した。
そしてその結果、顧客4人の有罪が確定。
残りの数千人についても、自発的に情報公開を提供することによ
って、免罪を受けるという内容に署名したという。
当行だけでなくスイスにとっても屈辱的な結果だっただろう。


ついに08年末にクレディスイスは、従業員の11%に相当する
5300人の人員削減を発表した。
それに続いてUBSも、09年3月に管理職5000人を削減。
さらに翌4月に一般社員8700人を追加リストラした。


すでにリヒテンシュタインも一部情報開示に合意している。
長年に渡って、刑事事件ですら明らかにされなかった秘密主義。
それらの国にとって、伝統だった金融の秘密主義は崩壊されたと
考えていいだろう。



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