ベルギー経済・財政危機 CDSスプレッドが急速に拡大中

欧州ベネルクスの国といえば、オランダとベルギー。
首都ブリュッセルにはEU本部があり、ある日本のアニメでも背景
となった国で、日本人にも馴染みが深い。
金融危機前はベルギーも世界経済の追い風を受け、一人当たりの
GDPは今でもトップクラスを維持している。


ところが今日になって海外報道機関が、ベルギー国債ドイツ国債
に対するCDSスプレッドが、ギリシャアイルランドも含めた
ユーロ圏の中で、最も速いペースで拡大していると報道した。
ベルギーは公的債務残高のGDP比率がナント97%に上っており、
これはユーロ圏で3番目に高いにもかかわらず、政治の空白で債務
削減に向けた取り組みが進んでいないといったもの。
同国では4月にルテルム第2次内閣が崩壊した後、未だに新内閣
が組閣されていないのだ。


EUの統計局によれば、ベルギーのGDP比率97%の債務残高は、
イタリアの116%とギリシャの115%に次いで高く、ポルトガル
アイルランド、スペインを上回っている。


やはりこの時期になって来たか. . . という思いだ。
ベルギーの債務残高の多さは以前からわかっていた。
統計をみれば一目瞭然なのだから。
今年の春に起こったギリシャ危機と、それによるユーロ圏危機回避
のための安定基金創設等で、ベルギーは陰に隠れていた存在だっ
たが、ようやくここにきて化けの皮が剥がれそうだ。
私が6月13日のブログで掲載した通りになった。


ベルギーは経済における輸出の割合が非常に大きい。
プラスチックやスズといった工業製品はトップクラスだが、ある意味
で欧州の工場と似たような存在でもある。
今年1月に米GMが、子会社のドイツ自動車大手オペルの経営再
建を加速させていくため、北部フランダース地域にあるアントワープ
工場を今年中に閉鎖すると発表している。
これによって同工場に勤務する2600人が、失業の危機にさらされ
ているのだ。
下請けといった関連会社も甚大な被害を受けることになるだろう。
チョコレートやワッフルだけでは経済の再建は不可能だ。


最新の失業率(7月)は8.9%。
これは欧州諸国の中でも決して高い数字ではない。
イタリアやスウェーデンフィンランドとほぼ同水準。
しかし過去の統計から遡ってみると、アイルランドほどではないが、
毎月コンスタントに0.1ptずつ増加しているのだ。
金融危機後、一度も改善した月はない。
成長率も09年はマイナス3.0%にも落ち込んだ。


国力から考えてもベルギーは、ギリシャアイルランドといった
PIIGS諸国、そして英国の次として主役に躍り出るだろう。
とにかく創設した通貨安定基金7500億ユーロは、ギリシャ一国
の救済で使われてしまう可能性が高い。

つまり何のセーフティネットにもなっていないのだ。
時期的に考えても、こういった基金はベルギーに使われることは
ない。
今後も周辺国同様、長期国債の発行などで資金を調達していくし
かないだろう。


ユーロ諸国は近い将来、ギリシャを本当に仲間から切り離すことを
するのだろうか?
来年1月には、新たにエストニアがユーロのメンバーに入る。
財政赤字が非常に少なく、欧州の優等生とまで呼ばれている。
輸出促進といった経済効果や、最低限の政治的影響を考えても、
試合中のサッカーのように、途中でのメンバー交代は必要になっ
てきた時期だと考える。
少なくともギリシャは憔悴しきっており、他の選手の足を引っ張る
だけだ。



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