ユーロが崩壊過程に。 欧州は輸出が好調でも、財政赤字は膨張へ

ドイツのメルケル首相は、今年の春から起こった急激なユーロ安は、
まだ完全に克服されていないと語り、「ユーロは現在、緊急支援措
置によって、かろうじて保護されているだけだ」 と述べた。
来年2011年のG20の議長国であるフランスが表明している、
通貨制度改革に取り組む方針を支持する意向を示したようだ。


メルケル首相は、2013年に期限を迎える最大7500億ユーロの
緊急支援措置については、単純に延長されることはないとの見解
を同時に示したという。
この通貨安定基金が決定されて半年が経った。
早くも夏場には、この膨大な基金ギリシャ一国で使い果たしてし
まのではないかという噂が流れ出したのだ。
一時は、1ユーロ107円台まで円高ユーロ安が進んだ頃だ。


本当に欧州諸国の危機の根は深い。
GDPがユーロ圏全体のたった2.7%しかないギリシャのリスクに、
ユーロ諸国16カ国が振り回されたからだ。
さらに米国の巨大金融機関をも揺さぶった。
せっかく米国政府から天文学的な援助を受けているのに、小さな国
ソブリンリスクは、こういった投資銀行を丸裸にさせてしまうこと
にも繋がりかねない。


さらに最近は、アイルランドの危機について喧しくなってきた。
これまで何度か記載してきたが、アイルランドの不動産バブルは、
欧州で最も早く崩壊し始めた。
首都ダブリンの不動産価格は、すでにピーク時から43%以上もの
下落となってしまった。
今年だけでGDPの3割以上の財政赤字が膨らんだのだ。

同国内では数百か所の宅地開発が途中で止まっているし、スペイン
と同じく、リゾートマンション開発も中途半端に打ち切られている。
アジアや東欧、アフリカ諸国から来ていた出稼ぎ労働者が帰国して
しまい、賃貸マンションの空室率も凄いことになっている。


つまりこういった同様な危機は、これからスペインやポルトガルにも
直面する運命にあるのだ。
イタリアも世界6位の財政赤字額に膨らんでいるが、ドイツと同じく
極端な不動産バブルは起こらなかった。
だからといって決して安心できる状況ではない。
イタリア国債の中身をみても、全体の4〜5割が外国からの資金で
支えられている。
イタリアも来年はドイツやスペインと同様、国債の増発が頻繁に行
われることになるだろう。


さらに来年は今年7月に続き、第2弾のストレステストが実施され
る可能性が高い。
第1弾の甘さを露呈させないよう、しばらく時間を置いて行われる
ことだろうが、その頃にはいくつかの主要な銀行が国有化されてい
るだろう。
民間から国有化されることで、チェック体制がされないか、隠ぺい
工作が行われてしまうかもしれない。


欧米諸国の景気や失業率の回復が全く改善されない中でも、財政
赤字や銀行セクターの不良債権額はどんどん増えていく。
今、欧州や新興国の通貨安戦争が起こっているのは無理もない。
唯一貿易の拡大によって、少しでも多く稼ぐしかないからである。
ユーロ圏各国は、通貨を勝手に切り上げたり、切り下げたりするこ
とは出来ない。
欧州の経済危機とジレンマは、心理的にも相当なストレスが働いて
いることだろう。



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