円高 輸入産業には打ち出の小槌 内需拡大と日本の存在感が拡大

家電製品や自動車、ハイテク製品まで、幅広い分野の日本の製造
業が生産拠点を徐々に海外へシフトさせている。
円の対ドル相場が間もなく史上最高値になり、日本経済は大きな構
造変革を余儀なくされている。


日本を代表するハイテク企業のひとつである村田製作所は、2年後
を目処に海外生産比率を倍増し、約3割まで引き上げることを目指
している。
デジカメ大手のキヤノンも、海外生産比率が過去最高の48%に達
したという。


日本は製造業の海外移転が増えると、雇用の喪失につながること
から決して良いことではないと、マスコミを通じて報道しているが、
過去20年から、日本の政治家が内需主導型成長の必要性を声高
に唱えていたにもかかわらず、未だに完全に脱却できないでいるこ
とを浮き彫りにしているといえよう。


80年代後半はGDPに占める輸出の割合は、わずか10%。
それが今では16%まで比率が高まっている。
しかしこれでも日本は輸出の割合が低く、12%の米国とほぼ同じ
く先進国では最も低いレベルだ。
日本は国内市場が大きいので、輸出に頼る必要がないということ。
だがこの円高は、構造自体を変えるという点ではチャンス到来だ。


7月の日本の製造業の労働人口は1029万人。
総務省が月間統計を取り始めた2002年は、1200万人だった。
しかしその間、新興国の経済拡大と、ITや小売といったサービス業
も拡大したわけだから、強ち労働者自体が少なくなったと考えるの
は間違いだ。
減少した製造業の従業員が、転職なのでサービス業に転化しただ
けなのだから。


今ではアジアとの取引ではドル建てでなく、円建ての比率が増えて
いる。このことが輸出業者のリスクヘッジとなっている。
財務省の統計によれば、対アジア輸出の決済のうち48%が円建て
で行われた。

現地通貨建てはわずか1.7%で、ドル建ては5割だ。
これからは円高がさらに進行することから、こういったドル建て比率
を下げていかなければならない。
これは政府だけではなく、民間企業も努力が必要だ。


日本は小資源国家で耕作面積が小さく、海外から膨大なエネルギー
や農産物を輸入している。
最近の日本は一部の発展途上国を含めて、食費が安くなったといわ
れているが、これは円高メリットも一部働いているからである。
ならば資源価格も低下してもよさそうなものだが、例えば石油などは、
ガソリンスタンドの設置費や人件費を考えても、思うように下げられ
ない事情がある。
こういったことは国によって構造が違ってくるのだ。


急激な円高でも日本は恐れる必要はない。
付加価値のあるハイテク製品や最終消費財なら、その分上乗せし
て売ればいいではないか。
とにかく “お客様にはこれからも低価格で提供いたします” という
間抜けな根性を持つ経営者の下では、円高は耐えられない。
思い切って価格を引き上げることも、経営者にとって大事な決断な
のである。



 ★シティアライアンス 代表兼 「ヒルザー・ドットコム」 運営者