欧州(ユーロ)経済危機 PIIGS財政破綻でIMFの資金も限界

11月下旬にEU本部のブリュッセルで決定された、850億ユーロの
アイルランド救済は、いわゆる財政赤字ではなく、銀行の救済だ。
過剰な借り入れや脱税、あるいは虚偽の国家統計が日常的に横行
していたギリシャとは違う。
アイルランド自身を窮地に陥れたのは銀行なのである。
銀行が同国国家を沈没させたといっても過言ではない。


こういった非常事態にみまわれた欧州経済から不信を感じる点とし
て、7月23日に一斉に実施されたストレステストが思い浮かぶ。
この結果、当初の不合格銀行はスペインの貯蓄銀行5行、ギリシャ
の農業銀行1行、ドイツの法人向け不動産会社ヒポ・リアルエス
ートの計7行だった。


しかし今回破綻同然のアイルランドの2行については、追加資本の
必要がないとして合格している。
バック・オブ・アイルランドと、アライド・アイリッシュ・バンクだ。
いかにストレステストの査定基準が甘いかがわかるだろう。
同国のアングロ・アイリッシュ・バンクなどは、ストレステストの対象
行すら入っていなかった。


しかし過去のブログでも記載したが、09年5月初旬に実施された
米国のストレステストもいい加減なものであったことを忘れてはいけ
ない。
マスコミでは報道されなかったが、テストの実施時、第3社機関を
全く介入させずに独自の判断で実施してきたからだ。
つまり臭いものには蓋をしたということだ。
すでに実施から1年半が過ぎたが、これまで米国政府の公的資本
注入で、何とか数字を誤魔化し、生き延びているに過ぎない。


さて5月に設立された欧州安定基金の他に、資金的な問題が浮か
び上がるのが米国のIMFだ。
現在IMFの資金量は7500億ドル。
最大の拠出国が米国で、2位に日本、ドイツが続く。
ギリシャポルトガルアイルランド程度ならまだいい。
米国は欧州ではないので、まだこの程度ならIMFの資金は枯渇し
ない。


しかしこれがスペインとなると話は違ってくる。
ギリシャが今後3年間で1400億ドルが必要となってくるというが、
スペインとなるとその5倍は必要になる。
これでIMFは、もうカネがない. . . ということになる。
米国は天文学的な財政赤字で、これ以上の拠出は無理だろう。
日本も麻生政権時にIMFに対して1000億ドルの拠出をした。
この時、G20の新興国から感謝の意を受け、閉幕時には、
【 史上最大の貢献 】 という称号をもらったことは記憶に新しい。
しかしその日本もこれほどの余裕なんてもう出来ない。


イタリアも危ない。そのうちスペンに続く国になるだろう。
しかしイタリアは、アイルランドやスペインのように不動産バブルは
起こらなかった。
イタリアは1兆3000億ユーロという欧州最大の債務残高を抱え
るため、ユーロが暴落すれば瞬く間に公的債務が膨張する。
また国債についても、ギリシャやドイツほどではないが、同国債
引き受け手の4割以上が海外の投資家なのだ。
これが実にヤバいのである。
来年の後半にはイタリア危機がやって来ると思われる。



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