ドイツ 社会保障制度 消費税は高いが、現役世代に優しい仕組み(2)

もし会社からまとまった休日が与えられたら、あなたはその時間を
どうやって過ごしますか?
ほとんどの人は、国内であったり海外であったり...旅行に行くので
はないでしょうか。


2009年の公式データであるが、この年に日本人が海外旅行に出
かけた数は1545万人。
数字だけをみると、毎年たくさんの人が海外に出かけているな. . . と
いう感覚を覚えるが、しかしこれでも人口からみれば、10人に2人
も出かけていないのである。
なかなか休暇が取れない日本人として、羨ましいという感覚が先走
っているのが本音だろう。
海外渡航者1545万人なんて、欧米諸国からみれば全然多くない
のである。


ではドイツはどうか。
人口は8170万人で日本の3分の2程度であるが、ナント毎年海外
旅行に出かける人は7000万人を遥かに超えているのだ。
いうまでもなくドイツ国民は、毎年必ず1回は旅行を楽しんでいるの
である。
これは欧州の主要国は似たようなもので、英国やフランス、イタリア、
スペインという、日本より人口が少ない国でさえも、毎年4000万人
から5000万人は海外に行っている。


ドイツでは働くときは効率よく生産し、その分休みもしっかりとるとい
うライフスタイルが昔から定着している。
こういった社会環境が整備されていることもあって、仕事と家庭につ
いてはしっかり区別する。
日本では以前ほどではないが、従業員に会社の寮や社宅に住まわ
せている企業も多いが、ドイツでは考えられない。
仕事が終わっても、仕事の雰囲気が抜けられない寮や社宅に住む
なんて、とても考えられないことなのだ。


またドイツでは、社員が重い病気やケガのために長期間休むこ
とになっても、経営者は最高6週間にわたって給料を支払うこ
とを義務つけられている。
さらに6週間を超えても、今度は公的保険制度が威力を発揮し、
月給の90%を最長78週間にわたって支払うというのだ。

我が国日本ではどうだろうか?
たとえ勤務中や通勤途中に起こったケガでも、労災保険が適用され
なければ支払われない。
しかも本人に注意不足という過失が少しでもあれば、保険は全額下
りることもない。
もしそうなれば、泣く泣く有給消化で削っていくしかないのだ。


女性社員に対する社会保障も羨ましいほど手厚い。
出産する時は、14週間の産休が与えられることになっている。
しかもこの間の給料は100%支払われる。

それだけではない。
経営者は最高3年間に渡って、その社員のポストを空けておか
なければならないというのだ。
つまり法律上、産休や育児休暇で欠員が出ても、企業はその
代わりの人を探してはいけないことになっている。

ちなみに日本の育児休暇期間は最高1年である。


最近では日本でも男性が育児をする 「イクメン」 という言葉が流行
り始めた。
昨年10月20日、大阪府箕面市の倉田哲郎市長(36)が取得した
ことで論争を呼んだ男性の 「育児休暇」 である。
市のトップが率先して取得することで、部下だけでなく、他の行政で
も広まってもらいたいことから、思い切って育児休暇を取ったという
ものだ。
本来なら完全支持して良いことであるが、当の橋下大阪府知事が、
“育児休暇を取る首長は世間知らずだ” と一蹴したのだ。
なんと時代錯誤な考えなのだろうと. . . 、残念に思ったのは私だ
けではないだろう。
ドイツでもかなり以前から男性が育児休暇を取得している。


またドイツではボランティア活動も活発である。
主に貧困層向けだが、失業者や生活保護を受けている証明書をみ
せれば、誰でも無料で食べ物をもらえる。
大手スーパーマーケットなど100社以上がスポンサーとなって、
売れ残った野菜や果物を寄付しているのだ。


また路上で物乞いをしている人を見かければ、小銭を恵んでいる人
をよく目にした。
筆者が隣国オーストリアを訪問したときも、路上には右手を差し伸
べている失業者や貧困者が多かった。
しかも中学生や高校生といった若者も、遠慮なく要求してくる始末
だ。
私はタダで恵むことはしない代わりに、その交換条件として、
“記念のため写真を撮ってくれますか?” と言って、その後わずか
ばかりの小銭や紙幣を渡した。
また街中で工事中の作業員に対しても、同じ要求をしてみたのだ
が、快く写真を撮ってもらったことを今でも覚えている。
こういった助け合いの精神は学ぶものがあるだろう。


ドイツは今、最大の難関にぶち当たっている。
周辺国の経済的危機の余波が、近い将来襲ってくることだ。
2日前のブログで書いたが、今は通貨安から輸出中心で恩恵を受
けている。
しかしPIIGS諸国中心に多額の債権を保有していることから、
いつ債権バブル崩壊が自国に及んでくるかで、政府は戦々恐々な
のである。
ギリシャ支援のように、簡単に他国を救済すれば、国民の支持は
一気に急降下する。
こういったことは日本以上に神経質になる国民だ。


民主党の鳩山前政権では、“東アジア共同体” を謳ったことがあっ
たが、今ではすっかり鳴りを潜めてしまった。
違う国同士が、同じ通貨を使って運営していくことの難しさを身にし
みて感じたに違いない。
歴史や文化の違いを考えても、欧州諸国とは異なる。
ドイツがギリシャに対して、個別に2兆円も援助したように、果たして
日本が同じような援助に走れるとは到底思えない。
何しろ日本以外は皆新興国であるし、経済規模や生活水準などは
格段に違うのだ。
民主党政権は国内問題を最優先し、周辺国の見本となる国創りを
一層進めてもらいたいと願う。



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