新日本製鉄(新日鉄)と住友金属工業の統合 「独占」「寡占」 に注意

2月3日、鉄鋼業界国内最大手の新日本製鉄と3位住友金属工業
が、来年2012年10月を目途に、経営統合に向けて動き出したという
ニュースが走った。
予定通り実現すれば、アルセロール・ミタルルクセンブルク)に次ぐ
世界2位の生産規模になる見通しだという。


新日鉄は現在世界規模では6位。住金は20位である。
お互いの独自技術をシナジーとし、頭打ちの国内から新興国といっ
た市場で競争力を付ける必要がある。
かつて新日鉄は生産規模でいえば、ミタルに次ぐ世界2位だったが、
中国の台頭であれよあれよと順位を落としてしまった。
国内2位のJFEや4位の神戸製鋼も、今では世界規模5位と30位
前後をうろうろしている状態だ。


今回の会見で両社長は、規模ではなく技術で勝負したいと語った。
しかし言うまでもないが、現在はまだ発表段階だけである。
実際に経営統合をし終わったわけではない。
人間のやることだから、1+1が必ずしも2になるとは限らない。
これがうまくいけば3にもなるし、逆に1・5にもなってしまうのだ。
キリンとサントリーが結果的に破談したように、統合比率や合理化等
を巡っての協議の行方が注目される。


一方で余計なお節介かもしれないが、今現在の大会社が将来自分
より小さな会社を吸収しようと考えても、その後の技術革新によって
逆の立場になることすらある。
昔の話になるが、日産自動車が本田を吸収合併しようとした時代だ。
今ではどうだろう。 世界販売でもハイブリッドにしても後者が先を行っ
ているのだ。
前者はようやく今になって、電気自動車(EV)のリーフで市場開拓を
進めている。


しかしその裏で、世界での生き残り策としては当然の政策ではあるが、
国内ではぶっちぎりの1位になることによって、「独占」 や 「寡占」 が
起らないとは限らない。
つまり需要と供給のバランス外で価格が決まってしまうことだ。
これが最も危惧されることであろう。
わかりやすいのはゲーム機が挙げられる。
こういった業界のDSとかWIIは、任天堂しか販売供給できない。
またPSにおいても、ソニーのみが製造販売できる。
だからどんなに需要があっても、自社に都合のよい価格設定が可能
になってしまう惧れがある。


他社にない商品があればどうしても独占や寡占が起る。
特許を取れば、それを国(特許庁)が後押ししてくれるのと同じ。
ただし市場価格で決まっていないものが一部存在するとはいっても、
売れないほど価格を引き上げたところでは意味がない。
よって公共事業などにおける競争入札の際に、複数の入札参加者が
前もって相談するような 「談合」 という悪しき商慣習さえ防いでいけ
ば、特に問題ないと考えていい。
結局は技術力で勝負するわけだから。


余談になってしまうが、こういった点でやや可哀相なのが食品業界。
食品業界は特許が認められにくい。
すぐに類似品が出回り始め、ネーミングやパッケージまで似たような
ものを作られてしまう。
そうなると販売力の勝負になって、薄利多売でやっていくしかない。
今回の鉄鋼業界のように “量で勝負しません” といった悠長な発想
ではとても勝てない。
だから普通のありきたりの商品では、どうしても人口の多い新興国
向かって行くのである。


だがここは逆転の発想で勝ち残れることもある。
例えばおむつ業界。
この業界をきいて、“日本は少子化だから縮小に向かう” という考え
が起るだろうが、何もおむつは赤ちゃんだけに使うものではない。
こういった点については、国内市場もまだまだ捨てたものではない
はずだ。
バブル崩壊後は銀行業界の再編が活発化し、2〜3年前からは百貨
店業界、去年ではコンビニのファミリーマートも、ampmを子会社化
している。 最近ではサッポロもポッカを子会社化した。
いずれにせよ業界の再編は今後も活発化していくだろう。



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