ユーロ圏「スタグフレーション」到来か? インフレ懸念が上昇(1)

欧州中央銀行(ECB)は先日、2月の月例報告を発表し、ユーロ圏の
インフレ率については、今年ほとんどの期間で目標を上回る水準との
見解を示した。
今後数カ月間を考えると、インフレ率は一時的にやや上昇して2%を
若干上回る水準にとどまる公算が大きと述べたという。


経済全体で考えた場合、需要と供給のバランスが悪くなってしまうと、
インフレかデフレのどちらかが発生する。
日本は現在のところデフレだという。
欧米諸国と比べれば経済情勢は全然マシなのだが、円高という要因
も重なって、輸入製品が相対的に安くなり、なかなか物価が上向かな
いということだろう。


しかし日本の消費者物価指数は1991年ごろから平行線。
決して今にはじまったことではない。
これに対して金融危機で大きなダメージを被った欧州諸国は、急激に
デフレが進行しているのが現状。
ここでちょっと考えてほしい。
通貨安戦争や金融危機でユーロやUSドルは下落していった。
もちろん対日本円だけではない。新興国通貨に対しても価値が下がっ
ていった。
この間ECBやFRB国債を大量に購入し、資金を市場に供給してい
った。
それにもかかわらずユーロ圏ではデフレに陥っていたのである。
米国も若干ではあるが下落傾向だ。


これはユーロ圏経済が思った以上に悪化しているというもの。
国債購入継続といった、ちょっとやそっとの景気対策では効果がない
ということだろう。
企業の倒産や雇用環境が悪化し、市場は少しでも商品を買ってもらい
たいという理由で価格を安くしていく。
とにかく公務員や年金受給生活者以外は大変だ。
民間企業についても、よほど競争力のあるところでないと価格破壊が
起ることになるだろう。


だがこのことについては、日本でも今デフレではないか・・・ といった
反論もあるかもしれないが、先に書いたように円高が進行したことも
ある。
それ以外の理由としては、日銀(BOJ)の通貨供給量が欧米と比べて、
全然少ないということもあるのだ。
2009年11月に政府はデフレを宣言した。
翌12月に新型オペとして10兆円の資金供給を決めた。
しかしデフレは収まらず、翌2010年3月には20兆円に拡大。
そして同年8月には30兆円に再び拡大したのだ。


これだけでは終わらない。
これに9月15日、折しも2年前のリーマンショック同月日に、政府が
2兆円もの円売り介入を実施した。
デフレの最大要因ともいわれる円相場だったが、これで対ドル82円
から84円台まで下落した。
もし当日(9月15日)何も対策を講じなかったら、一気に70円台まで
突入していた可能性がある。 この頃のブログに書いた通りだ。
リーマンショックの恐ろしさと発生日は、世界中の投資家が心理的
不安要素として覚えているからだ。
しかしこれも一時的な円安だったのは言うまでもない。


それにしても日銀による通貨供給量は、欧米の中央銀行と比べても
全然少ない。
金融危機後に投入した額は、ECBやFRBの2分の1以下。
こうしたこともインフレにつながらない要因として挙げられる。
確かに日銀はECBやFRBより保有資金は少ない。
こういった事情もあっただろうし、そもそも日本の金融機関のダメージ
はほとんどなかったのも事実。
しかし今後の円安誘導のために、お金を沢山刷ればいいではないか...
という考えを起こしそうだが、残念ながらそう簡単な話ではない。
その理由とインフレの話も含め、次回述べていきたい。



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