ユーロ圏「スタグフレーション」到来か? インフレ懸念が上昇(2)

誰もが一度は考えてみたことがあるかもしれない。
“ 国がお金をいっぱい刷れば、お金持ちになるから良いことだ ”
デフレの世の中、誰もがそう思ったことがあるだろう。
しかも米国では昨年から2度に渡る量的緩和策で、マネーが溢れ、
そのお金で株式市場や商品相場に向かっている。
しかし ・・・ これが国債金利上昇につながったり、それよりほん
の一部の金融機関しか行かないわけだから、見習う代物ではない。


日銀の理事たちも愚かではないから、そう簡単にうまく事が運べる
とは考えていない。
みんなお金持ちになれるのなら、もうとっくにやっているのだ。
お金の供給をどんどん増やしたって、モノやサービスといった供給
側の量は変わらない。
一日に100人分の寿司を頑張って作る職人がいたとしても、その
職人さんは100人分以上の寿司を作ることは難しい。
客の胃袋が大きくなるわけではない。
月産10万個を生みだす携帯電話の工場も、それだけしか作れない。
お金をばらまいたところで意味がないのだ。
モノとサービスの量は変わらないからである。


ところが危惧されることに、欧州、とくに米国ではデフレでもインフレ
でもなく、不景気なのに物価が上昇するといった恐ろしい現象が来
ようとしているのだ。
これは スタグフレーション という現象である。
所得が下がるのに物価が上がるから、生活が苦しくなる。
庶民にとってはたまらない。
日本でも原油なんかほぼ100%輸入に頼っているから、円高でも
急激な価格上昇で追い付かないことだってある。


いわゆるハイパーインフレであるが、最近では中南米やアフリカの
一部の国で起こったのだ。
こういった現象は一日単位から数時間単位で物価上昇が起ること
である。
このハイパーインフレが起こる要因としては、
・労働力の不足
・超大量の紙幣発行
といったところだ。
今まさに米国が歩み出そうとしている。
当時の新興国と経済事情が違うが、投入資金といった規模も格段
に大きいので、そう遠くない将来襲ってくるだろう。
USドルは、かつてのアルゼンチン・ペソや、ブラジル・クルゼイロ
ロシア・ルーブル、トルコ・リラ、ジンバブエ・ドルのように、紙屑に
近いものになるだろう。


そして今後はユーロや英国ポンドについても、インフレ圏内に入っ
ていきそうな気配だ。
農産物や資源価格の上昇はどこでも同じだが、通貨安が一段と
進むことから一層追い打ちがかかるだろう。
さらにECBやイングランド銀行(BOE)が今より国債購入を増やす
ことが予想されるため、政治的な要因も大きくなる。
各国10年物国債金利を以下に紹介する。
(日本時間2月12日午前6時)


・日本 1.2%
・英国 4.75%
・米国 3.625%
・ドイツ 2.5%
・スイス 1.8%
・豪州 5.75%
・ブラジル 10%
・中国 4.1%
・インド 8.15%
ギリシャ 11.5%


見ての通り、日本国債の信用度が最も高いことがわかる一方で、
新興国国債利回りが高いことも一目瞭然である。
リスクが高い国ほど、利回りも高くなるのである。
金利を高くしておかないと、機関投資家が買ってくれないからだ。
逆に日本やスイスのような低金利国債は、政府がそれほど海外
から調達を急いでいないということだ。
“ 買ってくれてもいいが、別に急に必要なことではない。 ”
といったところか。


ギリシャの利回りは去年5月と同程度に到達したし、ここでは紹介
していないが、ポルトガルアイルランド、スペイン、イタリアの10年
物利回りは同じ時期をはるかに上回っているのだ。
とにかく今後、国債増発が一気に増えそうなのが欧州。
次期ECB総裁として大本命であったウェーバードイツ連銀総裁が
辞退したことで、国債購入が一段と進みそうなのだ。
まさに政治的な圧力があったのだろう。
米国と共倒れにならないことを願うばかりだ。



 ★シティアライアンス 代表兼 「ヒルザー・ドットコム」 運営者