英国(イギリス)経済危機 金融機関の不良債権と財政赤字の膨張

英国経済も公的債務と銀行の不良債権で呻吟している。
財政赤字は9800億ポンド(117兆円)に達しており、対外債務に
至ってはGDP比の4倍近くもある。

単年度赤字だけでも、あのギリシャを上回っているから大変だ。


英国は昨年5月、キャメロン新政権が発足した。
しかし浮かれている余裕はなく、財政赤字の削減を真っ先に進めた。
児童手当を3年間中止、年金支給年齢の開始を引き上げ、それから
公務員の昇給も2年間凍結させた。
民間企業のほうはユーロ圏や米国同様、リストラの嵐が続いている。


最新の失業率は7.7〜8%。 ここ1年間ほとんど変わっていない。
しかし経済成長率は金融危機後も低迷したまま。
2010年の成長率は1.25%で、G7の中では最も低い成長率だった。
G20でもスペインに次ぐ低い成長で、昔の英国病を思い出させるかの
ような状況である。
ちなみに昨年の日本の成長率は3.94%。 G7では最も高い。


この英国であるが、隣国のアイルランドに膨大な銀行債権を有している。
これが直近で最も厄介な問題といっていいだろう。
PIGS4カ国に融資している額全体の5割以上をアイルランドに貸してい
るのだ。

残りの約3割がスペインだから、まもなく両国が一緒に危機にはまれば、
不良債権が一気に膨張することは不可避である。
一方で対外債務における長短比率においても、全体の3分の2が短期。
英国の本格的な危機は、いよいよ今年やってくる運命にある。


そして金融機関の赤字も膨れ上がっている。
金融危機後に国有化されたRBS(ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド)
の第1四半期決算は5億2800万ポンド。
前年同期比2倍以上の赤字となった。
ロイズという金融グループも、ほぼ数カ月ごとに大規模なリストラを進め
ていることから、RBSもまもなくリストラを再実施するだろう。


英国は中国、日本に次ぐ世界3位の米国債保有国である。
しかしここ3年間、毎年6月にほぼ全額の米国債を売り払っている。
だがその分、他国が順調通り買い進めていることもあって、それほどの
危機は持ち上がらなかった。
今年は米国が6月一杯で量的緩和策を終了させることになっている。
これが英国以外、とりわけ日本や中国を含めたBRICs諸国にどう影響
を与えるかが見ものだ。
いずれにしても英国は今年、去年の2倍の債務返済が訪れることから、
大きな試練を受けることになる。



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