欧州がストレステストを実施しない訳

今週に入って欧州通貨ユーロが、対円で大きく下げている。
先週は反対にユーロ高へと向かっていたのだが、ここ数日間は、
それを帳消しにするほどのユーロ安へと向かっている。


ここ半年ほどの間、BRICsといった新興国や日米といった
先進国でも、景気後退が終了したという前向きな発言を多く聞く
ようになったことは確かだ。
日銀が9月17日の金融政策決定会合でも、景気の現状判断を
「持ち直しに転じつつある」 と上方修正したのだ。


世界的に経済力が強い日米欧や中国までも、去年末から今年に
かけて大規模な経済対策が打ち出された。
国別の政府による経済対策をみてみると、


 ・日本 75兆円
 ・米国 77兆円
 ・中国 57兆円
 ・フランス 3兆円


最後のフランスは、一国としてはそれほど大きくないが、当時は
周辺主要国ほど住宅の下落が進んでおらず、妥当な対策といって
いいかもしれない。
しかし予断は全く許さないのが現状だ。
フランスの住宅下落は今後、スペインとともに大きく下落してい
くと思われる。
つまり欧州経済はこれからが本場に差し掛かるということだ。


2年前の金融危機発生後、米国では4大投資銀行が全て消えた。
さらに1年前のリーマンショック後、多くの米銀を身売りさせて
しまう結果となったことは言うまでもない。
米国は09年2月に主要19行の銀行に対し、将来への損失程度
や損失の回避策をあらかじめシミュレーションしておく管理手法
のストレステストを実施し、5月中旬に結果を発表した。


その結果、資金不足を指摘されたのは19行中10社。
残り9社は資本の増強が必要ないというものだった。
前提条件の甘さや、第3者機関にチェックさせないという等・・・
いわく付きのものであったが、政府からの大規模な援助もあって
か、この時点では一応健全性をアピールできたものと考えられる。


ところが米国政府やIMFは同様のストレステストを欧州に対し
て実施を要請したのだ。
それに対して欧州側は強い拒絶をしたという。
英国の財務省担当者は、不安定感と不確実性につながると言い、
ドイツの財務省も、実施に反対する姿勢を出した。
またECB総裁も、あまり意味がない・・・ と語り、反対。


このことから考えても、欧州の経済危機があまりにも深刻な状態
に陥っているということです。
欧州だけでなく米国も、まだ住宅価格が下げ止まっていません。
これだけではない。複雑に組み込まれたリスクの高い証券化商品
の実に7割近くが欧州向けに販売されていたのだ。

こういった商品が傷みだしてくるのは、まだまだこれからという
ことになるのです。


日本の金融機関はインチキ証券化商品による負債が、GDPの3%
程度ですが、一方で英国の場合、破綻したアイスランドと同様に、
金融機関の負債額が自国のGDPの5倍にも上っているのです。
スイスやオランダ、そしてベルギーもGDPの2倍〜4倍の規模を
含んでいるといわれています。


ついに来年には個人宅の火事から山火事へと飛び火するでしょう。
近いうちにアイルランドやバルト3国と東欧諸国の破綻が訪れます。
その次にスウェーデンとスイスが破綻。
最後に英国が76年来のIMF傘下に入る可能性が高いといえます。



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