スペイン 地獄の不動産バブル崩壊はこれから

90年代前半までは、欧州西側諸国の田舎町とまで揶揄されていた
スペインだが、通貨ユーロへの切り替えとともに、経済的な発展が
急速に進んでいった。
為替相場を基とした国内総生産(GDP)は、08年には世界9位。
カナダの経済規模を超えるまでになった。
(しかし主要国首脳会議には入っていない)


ところが昨今の世界的住宅不況が発端となって、スペイン経済は
戦後最悪のリセッションに見舞われてた。
失業率はすでに19%を超えてしまい、EU加盟国の平均失業率の
2倍にも達してしまったのだ。
欧州委員会の予測によれば、スペインの失業率は2010年末には、
20.5%に達する可能性があるという。
しかし私の個人的予想としては、こんなもんじゃ済まないと思う。


欧州連合で01―07年に建設された新築住宅のうち、約29%を
スペインが占めていたのだが、同国の人口が占める割合はEU全体
のわずか9%程度。
結果的に150万軒もの一戸建・集合住宅が売れ残ることになった。
人口が4600万人程度のスペインに、これだけの数の売れ残りは、
将来的に大変な危機感を感じてしまう。


今は新築物件が6割引きで売られることも多く、大手不動産業者は
「1軒の値段で2軒分買えます」 という広告を出したりしている。
とにかくこれから着工される物件は今ではほとんど見当たらない。
マドリードといった大都市郊外のクレーン群は、すっかり姿を消し
てしまったようだ。


深刻な景気後退は他のEU諸国と全く同様なのだが、なんとスペイ
ンの場合は、これから一層深刻さが増し正念場に入るというのだ。
では一体なぜこれからなのか???


スペインの不動産崩壊は、英国やアイルランドをはじめとした
他のEU諸国と比べ、約1年ほど遅れて本格的に始まっている。
スペインの場合、ナント去年のリーマンショック直前も住宅価格
が上昇していたのである。

つまりそれだけ他国と比較して、バブルの勢いが凄まじかったとい
うことなのだ。


その甲斐もあって、スペインの2大銀行(サンタンデール・BBVA)
はその間、他国の銀行が体力を落としていることを理由に、次から
次へと買収に走った。
こういった買収劇はリーマンショック後も続けられていたという。
自分の国だけは大丈夫だろうという酔いに駈られていたのだろう。


しかしさすがのスペインも今年の第一四半期には、急速に増加する
不良債権の処理に追われる羽目になった。
ついに09年8月にサンタンデール銀行は、それまでの稼ぎ頭とな
っていたブラジル不動産部門を売却せざるを得ない状態に追い込ま
れたのだ。


スペイン経済も不動産の上昇と消費によって反映してきた。
しかしこういった資金の多くは、保有する不動産などを担保に借り
入れされていたと思われるので、住宅価格の下落は担保価値の下落
を意味することになる。
今後は金融機関の貸し出しが制限され、さらに貸し剥がしが多くな
る要因になるだろう。


ドイツやフランスではようやく景気の底が見えてきたといわれる中、
スペインでは英国やアイルランド同様、いや、そういった国以上に
急激な景気後退が進んでしまう可能性が高い。



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