欧州経済危機 ユーロ圏の景気後退で動向と見通しは今年最悪期に。

各国の不良債権について、やはり欧州発の悪材料が目立ってきた。
まずは欧州中央銀行(ECB)が去年末に発表した報告である。
それによると、これからもユーロ圏の金融機関は追加で、
1870億ユーロ(約22兆円)の評価損失を計上することになる
だろうという見通しを立てた。
この評価損失は、商業用不動産と東欧新興国向け融資の回収問題
から発生するとのことである。


商業用不動産バブルは、なにも米国だけに限らない。
不動産価格の上昇率は、米国よりも英国やスペイン、アイルランド
のほうが大きかった。
その他の小国の不動産も上昇を続けたが、ユーロという基軸通貨
を導入していない国は、自国通貨が大幅に下落したことで返済額
金利が同時に膨らみ、さらにその上で貸し剥がしなどが起こり、
ニッチもサッチもいかなくなったのだ。

 
とにかくこういった評価損失の見積もりがどんどん追加されること
により、07年 〜10年における累計損失規模は 5530億ユーロ
(約70兆円)にも膨れ上がるというのだ。
この額は従来の見積もり(推定4900億ユーロ)よりも、13%も
拡大したことになった。
問題は見通しが更新される度に、不良債権規模の金利が拡大して
いることだ。
恐ろしいことだが、これからも増え続けるだろう。


また不幸にも、米国のジャンク格付け機関から立て続けに格下げを
食らった、ギリシャの財政危機も大きな懸念材料である。
ECBの要人は、ギリシャを始めとする財政危機に陥るユーロ加盟
国を救済することはないと明言している。
このことも現在、ギリシャCDSスプレッドが急上昇している理
由の一つと考えていいだろう。
去年11月の下旬に起こったドバイショック後に、ギリシャ
スプレッドは、一気にスペインとアイルランドを抜き去った。


ギリシャ財政赤字は2011年までにGDP比で12%以上にな
ると見られている。
EU加盟国の財政赤字上限はGDP比で3%であり、その水準を大
幅に上回ることになるのは確実だ。
というより、一部その他の国も守られていない。
ギリシャのインチキ公式データの発覚は、去年秋に政権交代が起こ
ったことで発覚した。つい数カ月前のことなのだ。
他のユーロ加盟国も、同様に隠されてきた国があってもおかしくな
いだろう。
それどころか、GDP比100%を超える国も続出してくる。
その国とは、今年はポルトガル。来年はベルギーであろう。

 
EU加盟国内からは、「今回のギリシャ財政危機は、世界金融危機
によって発生したのではなく、ギリシャ自らの怠慢が招いたものだ」
と、厳しい見方が出てきている。
当たり前のことだが、自国の通貨安とは、国内の不良債権を膨張さ
せてしまうことに他ならない。

ドイツのような輸出超大国にとってはメリットもあるが、英国や米国
のような輸出にあまり頼っていない国にとっては、大きなマイナス
でしかない。いわゆる金融事業に頼ってきた国である。


08年の秋から冬にかけては、米国発の金融危機がメディアを賑わ
せてきたのだが、今年は欧州発の金融不安も重なってしまいそうだ。



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