ユーロ圏の景気後退 ドイツ経済の指標と特徴 失業率は横ばい!?

ドイツの今年1月における失業率が発表された。
前月比横ばいの7.5%。
全体的な規模は決して小さくないが、他のユーロ諸国と比較して、
失業率が比較的安定している。


はっきりいって意外である。
フランスやイタリア、英国といった主要国の失業率が金融危機後、
右肩上がりに悪化しているとは対照的に、ドイツは去年の夏ごろ
から、1ポイントも回復しているのだ。


ドイツは2005年に失業率が11%に達していた。
90年代後半にも10%に達しており、当時は 「ドイツ病」 とも
皮肉られていたのだ。
しかしその後のIT革命や世界的な景気回復から、ドイツも軌道
に乗り、失業率は急回復した。
その好景気ぶりは、世界の主要国の中で最も堅調に表れた。
2008年には7.6%の失業率に下がったのだ。
これは驚くべき急回復といえる。


ドイツはいうまでもなく、GDPの40%を輸出に頼っている。
これは主要先進国の中で最も高い。
新興国である中国やブラジル、ロシア、韓国よりも高い推移だ。
リーマンショック後のドイツは、米国や英国と同じくらい景気が
悪化していったのだ。
日本以上の消費不況が襲ったのである。


このことから考えてみても、ドイツの失業率がここ2年間、ほと
んど悪化していないのは、非常に不思議で違和感を覚える。
ある程度の賃金低下が起こっているとはいえ、ドイツ経済を支え
ている製造業は、世界的な競争力を持つ一部のメーカー除いて、
今は瀕死の状態にあるといっていい。


ドイツは欧州最大の経済大国として、今回大きな問題に発展
したギリシャや、PIIGsといわれている国の国債を大量に買い
込んでいたようだ。

今回の金融危機でこういった国債を売却し、国のセーフティネット
として穴埋めしたのかもしれない。
もちろん一時的な公共事業に使った可能性が高い。


ここ数年のドイツは日本と同じく、急激な不動産バブルは起こら
なかった。
しかし商業用不動産最大手の 「ヒポ・リアルエステート」 は、
そのPIIGsの一角であるアイルランドに多額の融資を行ってい
たのだが、同国のバブルがいち早く悪化してしまい、巨額の損失
を被ってしまったのだ。
ドイツ政府は、まさに大きすぎて潰せないこの会社に救済の手を
差しのべた。 その額、最大で5000億ユーロ!!!
ドイツGDPの2割にも相当する天文学的な数字である。


一方で日本と対照的に悪化していったのは、国内の銀行である。
金融危機後、コメルツ銀行やドレスナー銀行は、莫大な債務を負
ってしまった。
悪質でリスクの高い麻雀証券を多く買い込んでいたためだ。
このことからドイツが世界的に誇る製造業への融資が、そろそろ
貸し渋り貸し剥がしに見舞われることになる。
失業率は安定しているが、財政赤字のほうは急激に膨れ上がってい
るだろう。
こういった数字はドイツも例外ではなく、意図的に隠ぺいしている
可能性も残る。


今はBRICsといった新興国への輸出増加が、雇用の安定に繋
がっている。
しかし近い将来のドイツ経済悪化は、欧州最後のショックになる
可能性が高いのだ。
今年後半から来年にかけて、最大の正念場になると思う。



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