タイ反政府デモ 経済・金融危機の中、特徴的な観光業も大損失(2)

まだ金融危機が過ぎ去っていない中、今回タイの首都バンコク
10日夜起きた反政府デモ隊と治安部隊による衝突で、11日夕刻
までに犠牲者が21人、負傷者も870人を超えたという。


タイ独自のマイナス要因として、国内で政治的なリスクが急激に高
まっていることだ。
こういった政情不安を嫌気した外資が、タイ国内から資金を引き揚
げることによって、直接的な経済要因以外においても、通貨バーツ
の下落圧力を加速させている。
ヨーロッパの格付け会社フィッチ・レーティングスは12日、今回
の衝突を受けて、同国の自国通貨建てのソブリン格付けについて
「特に懸念している」と表明した。


タイは08年から09年前半には再度の通貨危機を防ぐために、
繰り返しドル売り介入を行った。
しかしその後の反動で、ドルやユーロといった通貨安が加速してい
き、輸出保護の政策からドル買い介入も行ってきた。
少しばかりの為替変動に大きく敏感するのは中国だけではない。


タイでは過去にも、不正株取引疑惑のあるタクシン元首相の追放を
求めて06年9月に陸軍によるクーデターが勃発した。
さらに08年9月には、当時のサマック首相の退陣を求め、政府支
持グループと反政府団体が首都バンコクで衝突。
同月に同首相は憲法違反で失職し、ソムチャイ・ウォンサワット
が新首相となった。


しかしこれで納得しないのがタイ国民である。
反政府団体は政府に対する反発を一層強め、08年11月には首都
近郊の2つの空港を占拠し、閉鎖されるという事態になった。
一週間以上もヒトやカネの動きが止まり、タイ経済のなかでも大き
な割合を占める観光業に大打撃をもたらした。


タイ経済における観光業の割合は毎年10%近くにも上っている。
今でも毎月、外国人観光客が25万人も訪れる国なのだ。
しかし今月に入って3割ほどの観光客が減少しているという。
毎年4月に行われる水かけ祭りも中止が決まったようだ。


最近ではタイのパタヤで、09年4月11日と12日に予定されて
いたASEAN関連会合が中止されたことが記憶に新しい。
開催が予定されていたのは、ASEANプラス3(日中韓)首脳会議
と、豪州、ニュージーランド、インドの東アジア首脳会議だった。
デモ隊2千人ほどが会場のホテル前に集結し、その後も急激に数が
増え、数百人がロビーのガラスを壊し乱入した。
結局ホテル内の混乱が収まらなかったため、アピシット首相は会議
の中止を発表したというものだ。


タイではプミポン国王の意思が絶対視されているため、国王が
仲裁に入るなどの措置を講じなければ、今回のようにタクシン派と
反タクシン派の対立を打開するのは難しいかもしれない。



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