イタリア経済・財政危機 ユーロ圏でスペインと共倒れになる可能性も

ユーロ圏だけでなく、欧州全体や米国まで巻き込んだギリシャの金融
危機は、残念ながら欧州全体が抱える問題のほんの一例に過ぎない
だろう。
世界の投資家はここ数カ月間、スペイン、ポルトガルアイルランド
の債務の水準と、今後増加する財政赤字を非常に心配そうに見つめて
きたが、ドイツや英国、フランス、イタリアが抱える問題でさえ懸念
を免れることはできない。


5月中旬に欧州諸国は、ユーロ防衛のための総額7500億ユーロの
金融支援策を発表し、時間稼ぎをした。
しかし中・長期的な問題は依然残ったままだといえる。
ほんの1カ月も経たないうちに、この巨額な金融支援策だけでは全く
足りないという話が出てくる始末。


今はスペインやポルトガル財政赤字がクローズアップされている
が、ここへきて東欧のハンガリーブルガリア財政赤字も問題視
されてきている。
ハンガリーブルガリアも、つい最近になって政権が交代したため、
前政権が隠してきた指標が次第に暴露されつつあるのだ。
これはギリシャの事情と全く同じである。
そしてさらにここへきて、欧州第4位の経済大国であるイタリアの
財政赤字がいよいよ注目されてきた。


イタリアの公的債務はGDPの約115%に達している。
このうち、およそ2割が今年中に借り換えを迫られるという。


よく日本の公的債務がGDPの2倍に上っており、欧州のギリシャ
になるのではないかという話をマスコミを通じて伝えているが、
全くもって杞憂といえるものでしかない。
日本の国債は94%が日本国内の投資家によって支えられており、
残りの6%についても、市場で簡単に売却できないような優遇措置で
守られているのである。


イタリア政府は09年の実質GDP成長率をマイナス4.9%から
さらに下方修正して、マイナス5.1%と発表した。
これは成長率だけをみれば、PIIGS諸国の中でも最悪の指標だ。
東欧やバルト三国と同様の悪化ぶりといっていい。
輸出の割合もドイツほどではないが、GDPの3割近くを占める。
今後はユーロ安が一層進むこともあり、とくに輸出企業は恩恵を受
けるだろうが、国際間で取り引きされる金融・債権市場には逆効果
をもたらしてしまう。
個人が借りている住宅ローンやその他の借金も膨れ上がる。


PIIGS諸国は自国の通貨を勝手に切り下げることはできない。
通貨を左右させる決定権を持っているのは、あくまでECBだ。

今年7月にはスペインの国債償還が待っている。
図らずとも急ピッチで財務指標がどんどん悪化していくだろう。
来年は英国とイタリアが最大の注目を集めることになる。



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