ロシア経済危機と今後の見通し 石油と天然ガス 農業への野望

世界的に極寒だった今年の冬だったが、打って変わって最近のロシア
では、場所によってセ氏40度を超える異常な高温が続いている。
同国政府はシベリア地方にいたっても非常事態を発令したほどだ。
現在干ばつ被害を受けている地域では、穀物を作付けした農地の半数
以上が壊滅状態となっているという。
この猛暑と少雨、干ばつでロシアが誇る穀物価格が急上昇している。
その農産物と言えば、ズバリ小麦だ。


ほんの10年前までロシアの小麦輸出は、せいぜい数百トンに過ぎな
かった。
しかも80年代前半には世界最大の小麦輸入国だったのだ。
しかしその後は生産が急速に拡大し、現在では米国、カナダに次ぐ
世界第3位の輸出大国へと見事に変身した。

政府も今後15年間で穀物生産倍増計画を打ち立てている。
こういった異常気象で、この2週間余り、小麦価格は3割以上上昇し
たのだ。


国内消費の9割以上を海外から輸入している日本は大変だ。
麺類やパンだけでなく、お菓子なども含め、世界中の食卓には幅広く
小麦が利用されている。
08年夏に石油といった資源価格と同様、急激に高騰した小麦価格
が、今でも鮮明に記憶に残っている。


ロシア政府は今年度の穀物生産見通しを8500万トンとしたが、
昨年は9500万トンの穀物を収穫し、このうち8100万トンが小麦
だったのだ。
ロシアは超広大で膨大な土地資源を有し、国土は地球上の陸地の
12%を占める。
一方で利用可能な土地面積は世界農業用地の3.3%。
しかしこれでも欧州25ヶ国分を合わせた面積に匹敵するという。


一方で他の工業製品と同じく、利用効率については世界最低レベル。
(反対に工業製品の利用効率最高レベルが日本)
農地1ヘクタール当たりの平均収益高は、欧州諸国の7分の1程度し
かない。
それでもロシアの農作物生産高は全欧州諸国の生産高を超えていて、
世界の農産物生産輸出国の三本の指に入っているというのだ。


ロシア政府が今年2月1日に発表した09年の実質GDP成長率は、
マイナス7.9%という悲惨な落ち込みだった。
前年08年の成長率がプラス5.6%だったことを考えれば、まるで
天国から地獄に落とされたようなものだ。
通貨ルーブルも、いまだ徐々に下落している。
5月には政策金利を過去最低の7.75%に引き下げた。


日本がバブル経済に踊っていた80年代後半の為替レートをみると、
当時は1ルーブルが300円以上もしていたが、その後の経済破綻
によるデノミや新紙幣、新コインの発行などで、見るも無残な状態に
陥り、今では1ルーブルが3円を割っている。
欧米諸国の経済がますます混迷を深める中、今後のロシアは隣国の
2大市場、インドと中国へのシフト変換をしなければならない。
今後こういった国は資源や農産物の消費が急激に増加していく。
つまりこういった製品をチラつかせ、ロシアは政治的な駆け引きを
起こす可能性もある。



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