ギリシャ危機 IMFによる融資限界で、財政破綻は2012年頃(2)

日本もそうであるが、ギリシャ世襲好きな国である。
現在財政再建に翻弄されているパパンドレウ首相も、実は3代目だ。
日本でいえば鳩山前首相か麻生太郎のような人といっていいだろうが、
ギリシャの首相はもっと奥が深い。
なんと3代続けて首相を務めてきた家系だからだ。
世襲でなければ這いあがれない環境は、突然出てきた才能の芽を奪
うことになる。 活力が弱まるのは当然である。


7月に年金改革法がギリシャ議会で可決された。
基本的なものは割愛するが、とくに語られないものとしては、女性の
受給開始年齢を60歳から65歳に引き上げたことだ。
また最高額支給の期間を従来35〜37年から、40年に引き延ばし
たことも大きい。


統計を信用するというだけならこんなデータが出てきた。
G20や欧州の一部の国を含めた計30カ国が加盟するOECD
調査によると、平均労働時間が最も長いのは韓国で、それに続く2位
ギリシャというものであった。
これだけをみると、“全く働かないギリシャ人” という批判は全く外れ
しているということになるが、所詮は統計に過ぎない。
しかも自己申告をもとにした調査なので、どこまで信用できるか疑わ
しいものである。 (ある意味で韓国も同じことが言えるのだが)


最近になって現パパンドレウ首相が、借金の原因をこれまでの政権の
せいにしなくなった理由は、所詮は過去において身内の政党がやって
きたことに気ついたことだろう。
“親父たちがバラマキ過ぎたのが悪い” とはなかなか言い辛い。
結果論ではあるが、当時は豊かな生活を国民に与えていたことは確か。
国債はもちろん、様々な経済活動を海外に頼ってきたツケがまわって
きたが、当時は当時としてやむにやまれぬ事情があったのだろう。


しかしその一方で、周辺の大国に対しては自分なりの文句を語る。
自分たちの危機が表面化し始めた時、平身低頭でドイツやフランスな
どに支援を要求すれば良いもの、
“この問題は我々だけでなく、ポルトガルやスペインも同じだ!”
“悪いのは格付け会社CDSだ!”

などと、被害者意識丸出しの発言を繰り返してきた。
これによって、市場や格付け会社によるギリシャの評価を一層落とし
た理由にもなった。


外交政策においても決して弱腰はみせない。
80年代から90年代にかけて米国に対し、しつこく米軍基地の閉鎖
を要求し、4基地のうち3基地の閉鎖を見事に成し遂げた。
約10年に及ぶ交渉で閉鎖に追い込んだのである。
基地の閉鎖ではなく移転を公約に揚げながら、それが無理だとわか
ると、わずか8カ月程度で辞任してしまった鳩山さんとは違う。


反面ギリシャはマクロ経済で見た場合、今後苦しい立場にある。
ギリシャは貿易面でも海外に大きく依存している。
輸出の9割近くはユーロ圏をはじめとしたEU諸国なのである。
通貨ユーロの下落によって輸出が増えることは確かだろうが、その
効果の程は乏しいと思える。
なぜならユーロ圏の中でもドイツやフランス、イタリア、スペインと
いった経済大国も同じ通貨を使っているため、為替によるメリットが
小さい
と思えるからだ。
ドラクマ時代とは違い、勝手にユーロを切り下げることはできない。
こういった特権はECBが持っている。


それではユーロを離脱させてもらい、再びドラクマに戻ればよいでは
ないか. . . という話が出てくるだろうが、これも現実的ではない。
周辺国やIMFなどから莫大な支援を受けているのに、離脱というこ
とになれば、恩を仇で返すようなもの。
そしてユーロの急落を一層引き起こす原因にもなる。
責任感話が、皮肉にも後々の責任を圧しつけ、放棄することになる。
仮にECBから承認を得てドラクマ時代に戻ったとしても、最高の輸
出環境が整ったところで、債権国などはあえてギリシャ製品を求め
るようなことはしないだろう。
一次産業ですら、これといった製品はギリシャにはない。


去年末から今年に入っての数回の暴動は、実に子供っぽいものだ。
ビルを放火し、ショーウインドウを割って、そこから品物を略奪し、
車を傷つけるなど、まさにやりたい放題だった。
去年12月上旬に起きた暴動は5日間ほど続いたが、約1000店舗
が放火や盗難にあわされ、損害額は10億ユーロにも上ったという。
同国の輸出額の5%が、たった5日間で消えたということだ。
今回の危機は、そもそもこういった自営業や小さな民間会社のせい
ではない。
まるでガキ大将を思わせるような幼稚な考えと行動といえる。



 ★シティアライアンス 代表兼 「ヒルザー・ドットコム」 運営者