円高ドル安進行 円が15年ぶりの高値 米国の絶望的な雇用統計で

8日に発表された9月の米雇用統計は、各州をはじめとした地方の
雇用削減が響き、予想以上に大幅な減少となった。


国勢調査終了に伴い、一時雇用していた7万7千人を解雇。
これがそのまんま純減となったようだ。
もちろん実体経済の悪化により、非農業部門でも前月比9万5千人
減少した。
前月が5万7千人減だったことを比べれば、まさに大幅な悪化指標
といえるだろう。


米国はドル安を歓迎していることは確かだ。
これは輸出を増やして雇用を伸ばそうとする欧州と同じだ。
ある意味では中国も同じであろう。
とにかく円安ドル高では、米国製品は日本市場では売れない。
米国製品は農産物以外においては、目立った魅力を感じないのが
本当のところだろう。


1985年のプラザ合意で、ドル安へ誘導することをまとめた。
円はどんどん高くなり、1ドル120円台に突入した後に安定した。
この超円高で大不況が訪れると思いきや、そうはならなかったのだ。
これはひとえに原材料コストの低下で、製造業の負担が減ったこと。
そして円高という逆境を克服し、高付加価値製品を次々と開発して
いったことも大きい。
さらに工場を低賃金の東南アジアだけでなく、市場の大きい欧米に
も移転させたことも有利に働いた。


ところが自国の通貨安で、米国や中国がいつまでも同じように輸出
が伸びるかといえば、少々疑わしい。
一定の利益をもたらすかもしれないが、所詮単価が安い製品にかわ
りないからだ。
米国は自動車や家電製品については、大きく後れをとっているし、
世界に冠たる軍事産業についても、同国大統領が戦争を好んでい
ないので、イラクやアフガンのような戦争の火種が、再発するような
ことにはならない。
つまり銃や戦闘機の需要が低下していく。
金融についても同じこと。 世界のドル需要がどんどん収縮する中、
米国に有利なマネーゲームは再び起きることはない。
(というか、決して起こしてはならない)


自動車の復活も絶望的だ。
確かに今年に入ってGMは絶好調である。
政府から注入された公的資金も返済し、再度の上場を目指している。
しかしこれは一過性に過ぎないものとして消え去るだろう。
GMやフォードの明るい兆しは、トヨタのリコール問題のおかげで、
息を少しばかり吹き返しただけの話である。

この先は環境問題などや新興国からの原油需要拡大から、低燃費
のハイブリッドや電気自動車、さらに水素自動車へとシフトしていくか
らである。
いずれをとっても米国車に明るい未来はない。


これは中国においても同じこと。
中国製品が売れているのは、他国と比較して安い製品が多いから
に他ならない。 これはレアアースについても同様だ。
急激な人民元高になれば採算割れは確実。
これによって法人税所得税が国に入らなくなる。
無数の従業員は都会を離れ、仕事が無い田舎の世界に舞い戻って
しまうから、地方を中心に暴動が多発する。
中国政府が恐れているのはこのことだ。


こういったところが日本と全く違う。
マスコミは円高になると雇用が悪化するからと、円安基調を支持して
いるが、メーカーが海外に移転することは、それだけ現地の雇用を支
えているということではないか。
それに世界で当該製品の市場が拡大し、日本国内の本社の雇用人
数も増えることに繋がる。

それにこれからの時代は、原発や水、ロボット、環境部門といった
日本のお家芸といえるビジネスが増え、国内の雇用に大きく寄与す
ることになる。
特に環境分野の強みは、日本が決して1位ではない航空産業や
宇宙産業、そして軍事産業まで羽を広げることができるのだ。

もちろん家電製品といったものでも、日本の特許は今でも生き続け
ている。


自国の通貨高は国内市場の活性化に繋がることは明白だ。
プラザ合意後の日本は、かつてない急激な不動産バブルで好景気を
経験した。
バブル崩壊後は血が噴き出すほどの痛みを味わったが、こういった
経験を糧にして、年率で数パーセント程度の不動産価格上昇は甘受
すべきである。
これからの円高時代は、政府の規制緩和とコントロールをうまく噛み
あわせていかなければならない。
メリットとしては国内問題としていつでも処理できるからだ。
海外からの政治的なリスクは小さくなる。



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