PIIGS危機 4カ国の国債利回りが急上昇 5月の最高値に並ぶ

欧州CDS市場でアイルランドポルトガルに続いて、スペインや
イタリアの国債利回りも上昇し始めた。
イタリアとドイツ10年物国債の利回り格差は先週末、ユーロ導入
後の最高水準となった。
スペイン国債ドイツ国債の利回り格差も最高水準。
戦後最も厳しい経済状況に、銀行負債や財政状態が日々悪化し
続ける国債を投資家が敬遠する動きが広がっている。


やはりここにきてアイルランドの危機が決定的となったようだ。
何といっても対外負債が恐ろしく巨大なのだ。
同国の対外債務はGDPの8倍を軽く超えている。
政府負債は他のPIIGS3ヶ国と比べて小さいが、長期負債が他を
圧倒している。
ギリシャポルトガル、イタリアの長期負債の4〜5倍も抱えてい
るのだ。


また銀行負債においては、ナント長期負債より厳しい。
同国GDPの3.5倍にも上るのだ。
これはイタリアの10倍、ギリシャの8倍、ポルトガルの3倍程まで
膨れ上がっている。
当時は好景気だったとはいえ、こういった無秩序ともいえる不動産
価格上昇に対し、同国政府は何をやっていたのだと疑いたくなる。


さらに決定的な理由のひとつに、CDSスプレッドが過去に例のな
いくらいに急上昇していることだ。
実はアイルランドの場合、5月欧州危機時、ギリシャポルトガル
ほど利回りが上昇していなかった。
それがここにきて一気に、5月のユーロ基金決定時を遥かに上回
る水準まで悪化しているのだ。

そしてスペインやイタリアも半年ぶりの最悪水準まで悪化した。


アイルランド政府は、2011年半ばまで資金調達の必要がないこ
となどを理由に、金融支援を要請していないとしている。
ところがである。 ここにきて新たな支援協議の噂が広がった。
ECBに対し、日本円にして約9兆円の支援を要請したという報道
が日本のオンラインユースで広がった。
これは先日、アイルランドの銀行が抱える貸し倒れ損失が2012
年末まで、850億ユーロ(約9兆6400億円)を下らないとの概算
を示した数字と似ている。


それにしても何というか. . . 基本的な疑問が湧いてくる。
アイルランドやイギリスのように、金融や不動産しか取り柄のない
国に、金融危機や不動産バブル崩壊という難局をどう乗り越える
というのだろう?
しかも今後もますます状況が悪化していくというのに。
やはり欧米や新興国が輸出拡大のために、為替安競争をしている
という理由は納得できる。


日本の場合も、確かに経済危機に陥った。
しかしこれはリーマンショック後の資金流出と、世界経済の急激な
収縮によって輸出が下落していったことだけだ。
しかしこの点については他の国も全く同様だった。
しかも日本の場合、上記2つの要素が悪化しても、モノ作り国家は
衰退しなかったし、今もなお圧倒的な力がある。
だから為替にしても国債にしても、唯一健全な状態を維持している
のである。
とにかく週明けの為替相場、もしくは海外市場が気になる。
ユーロと反対に相場が動くドルは、比較的堅調に推移するかもしれ
ない。



 ★シティアライアンス 代表兼 「ヒルザー・ドットコム」 運営者