中国 貿易黒字が過去最高を記録 中身は典型的な発展途上国型黒字

中国当局が発表した今年11月の同国貿易統計によると、貿易黒字
額は228億9000万ドルと、前年同月比で19.9%増加したという。


中国は世界的金融危機後、不動産バブルも手伝って、国内景気の
回復に伴って輸入が急拡大した。
しかし今年3月は6年ぶりの貿易赤字を記録した。
しかしその後は景気回復から輸出も回復。
慢性的な黒字が定着していることから、巨額の対中貿易赤字を計上
する欧米諸国などは、人民元相場を不当に安く抑え、輸出を梃子入
れしているとの不満を強めている。


中国の対欧輸出は対米輸出より多く、輸出全体の2割を占めている。
伸び率も大きく、欧州への輸出は前年同期比で5割も増えているの
だから、確かに勢いはあるといえる。
しかし中国の貿易収支の中身をみてみると、日本の貿易黒字と比べ
てまるっきり違うことがわかる。
安価な日常生活品が多く、大量の製品を欧米や日本へ輸出している。
たとえ高価な完成品であっても、外資系企業の製品がほとんどで、
自国のブランドなんてほとんどない。


家電の「ハイアール」や、太陽光発電パネルの「サンテック」といった
企業の海外進出は増えているが、こういった製品の大部分は日本や
欧米諸国の技術によって支えられている。
後者の太陽光発電に使うパネルは、日本企業が世界関連特許
の68%を持っている。

残りの3割についても、欧州や米国の企業で、中国の特許はわずか
2%にも満たないのだ。


先進国と発展途上国がお互いに貿易すると、先進国が良い製品を作
り、発展途上国は安くて品質の悪い製品を作るから、一般的に先進
国が黒字になって、後進国が赤字になると決めつけてしまいがちだ
が、これは誤りである。
上記のような発想は単純すぎるものだ。
これまで振り返ってみると、大抵先進国が貿易赤字になり、後進国
が貿易黒字になっている。


中国や中南米、アフリカといった発展途上国は、王侯貴族やほんの
一部の金持ちが存在するが、貧困層が9割以上と圧倒的に多いから、
内需がなかなか拡大しない。
しかももっと都合が悪いことに、こういったほんの一握りの金持ちに限
って、先進国の製品を好む。
だから今日や明日の生活がままならない庶民は、外需に依存しなけ
ればならない。 よって貿易収支は黒字になるわけだ。
先進国は消費のパイ(分母)が大きいので、庶民レベルでも衣食住を
楽しみ、高価なブランド品なんかも時々購入できる。
さらに先進国は高級品なんて自国で生産できるから、一般消費者も
自国の製品を買う。


中国の貿易黒字の情報や報道をみて、中国は元気だ! 勢いがある!
などとすぐさま思う人も多いが、勘違いしてはならない。
海外からの投資が増加しているから、職に就ける人が増え、少しず
つまともに生活できている人が多くなっただけである。
新興国は人間でいうと成長段階の子供だから、元気に決まっている
のだ。
しかし一本立ちはできないから、先進国のスネをかじらないと生きて
いけないだけである。


最近では中国企業によるラオックスや、レナウンの買収報道がされ
たことは記憶に新しい。
しかし前者の場合は秋葉原を拠点としており、中国人観光客向けの
免税店として成り立っているから、売上など一部は日本国内の儲け
にも繋がる。
後者についても完全買収ではなく、中国企業が株価の41%を持つ
筆頭株主になったということだ。
だから資本提携であって、51%以上の買収ではないのである。


いずれにせよ日本などは中国の実態を全て報道しないので、現在の
情報は詳細にはわからない。
日中記者協定といった政治的な拘束があるから、全て真実を報道で
きないからだ。
しかし十分予想できることは、今後も為替市場でユーロ安が進行し、
土地や人件費の高騰が続くから、海外からの投資は減るだろう。
衣服のユニクロや家具のニトリといった企業は、今以上中国に進出
できないと表明しているし、契約書や知的財産権を守れず、ストラ
イキが頻発し、暴動の確立が高い中国なんてマッピラと思っている
企業が増えていくのは間違いない。
レアアース問題は、中国の不信感を頂点に引き上げたといえる。



 ★シティアライアンス 代表兼 「ヒルザー・ドットコム」 運営者