スペイン ユーロ最悪の失業率で補助金の打ち切りへ PIIGS危機

スペインのサパテロ政権は12月3日、追加景気対策閣議で緊急
承認し、同日実施した。
中小企業への減税拡大、会社設立の簡素化、たばこの増税、長期
失業者への補助金打ち切りを決めた模様だ。
戦後最悪の失業率(20.7%)に見舞われているスペインにとって、
失業者への補助金打ち切りは厳しい。
同国の失業者が、本気になって職探しをしているのかどうかは定か
ではないが、かなりの国民が街を彷徨うことになるだろう。


米国の2倍、英国の1.5倍もの規模で不動産バブルが進んだ同国
は、依然として不動産価格が下落し続けている。
リゾート地では2軒の別荘を定価で買うと、もう1軒が無料で付いて
くるといった政策を今でも続けている。
最大の都市マドリードでもバブル崩壊の影響は激しい。


問題はスペイン一国だけで解決できない点も大きいのだ。
主な懸案事項は現時点で少なくとも2つあるだろう。
1つ目は、ユーロ圏という組織に入っているだけに、PIIGSといった
周辺国の事情で揺さぶられてしまうからだ。
今年5月中旬に7500億ユーロの欧州金融安定化を創設した後、
ギリシャに対し5月と9月に計290億ユーロが提供された。
そして11月末にはアイルランドに850億ユーロを提供した。
ECBもギリシャ国債を600億ユーロ、アイルランド国債に対しても
120億ユーロを仕方なく購入している。


国債の外国人保有率も徐々に上がってきている。
ギリシャ国債の外国人保有率は9割超。
金融危機直後の8割程度からどんどん悪化している。
アイルランドポルトガルも5〜6割に達した。
イタリアも半年前までは4割だったのが、今では5割をあっさり超え
てしまっている。
スペインは3割程度だ。
他国同様、今後も海外依存度が上昇していくだろう。


2つ目のポイントは欧州最大の経済大国ドイツの姿勢である。
ドイツ政府はギリシャに対する2兆円以上もの支援に、国民の反発
を買ってしまった。
先日はユーロ安定基金の更なる増額に対しも、即座に “ノー” を突
き付けた。
このようなEU諸国内におけるドイツのある意味での孤立は、第2次
大戦以来、初めての事態だといっていいだろう。


そして今、ユーロ共通国債の発行がEUの話題となっている。
ユーロ圏16カ国が一致団結して、ユーロ建ての債券を発行するこ
とで、危機国が高金利を回避できるようにしたいらしい。
これに対してもメルケル首相は即、首を横に振った。
このような消極的態度から、ルクセンブルク出身のユーロ財務相
当であるユンケル氏は、
“ドイツ人はヨーロッパ人ではない!” と、わざわざドイツ週刊誌の
インタビューで語ったという。
お笑いのように思えるが、当人は本音で言ったのだろう。


とにかく来年は、米国や英国が本格的な危機に陥る。
英国の借金返済については、来年は今年の倍に達するのだ。
米国も金融機関の業績悪化によって、住宅ローンなどの金利上昇
が本格化する。
さらにPIIGS危機によって、財務体質の悪化以外に、信用問題も
急激に低下(噴出)していくだろう。
つまり今まで隠してきた隠ぺい工作が暴露されていくことになる。
すでに一部は報じられている。 先日のブログでも書いたとおりだ。
第2のストレステストも、多少の正直さが出るだろうが、それは悪材
料が増えることを意味するから、解決策にはならない。
1回目(過去)に行ったテスト結果の馬鹿さ加減を増幅させるだけだ。



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