ECBの利上げ インフレ対策も、PIIGS諸国には大打撃

ECB(欧州中央銀行)は今月7日の定例理事会で、政策金利を現行の
年1%から0.25%引き上げ、1.25%とすることを全会一致で決めた。
今回の利上げは日米欧の主要中央銀行としては、リーマン・ショック
後初めてというもの。
最大の理由はインフレ対策だとトルシェ総裁は語った。


確かにユーロ圏のインフレは、想定内を超えて毎月高い水準に向かっ
ている。
1月は2.3%、2月は2.4%、3月は2.7%と、わずかではあるが、
毎月上昇しているのだ。
これは豪州やロシア、アルゼンチンといった農業大国が干ばつや水害
といった自然災害に見舞われたため、一次産品の価格が上昇したこと
もあるが、それだけではない。
その他に原油価格の上昇や、こういった原因を作った米国の量的緩和
策も要因のひとつだ。


景気が低迷していることから、失業率の改善はもちろん、賃金の上昇
すら期待できない中、食料品の高騰は生活に大きく響く。
今回の0.25%の利上げはそういった意味では当然だろう。
しかし問題はこれからである。
利上げ後も物価が落ち着くとは限らない。
ガソリン価格はこの1年間で13%も上昇しているし、小麦にいたっては
去年46%も上がった。

いうまでもない。 ゴールド(金)も25日には1オンス=1500ドルを
突破した。
今後も利上げ以上に物価上昇が続く可能性は高いのだ。


今回のECBの利上げは、インフレ対策であったことは当然の策であ
るにしても、債権市場では逆効果になることは明白である。
ギリシャやスペインといったPIIGS諸国の経済を一段と悪化させるこ
とになるだろう。
実際のところ利上げ後の翌週4月12日、これらの国の国債利回り
一斉に急上昇しているのだ。

利上げによる逆効果であったことは間違いない。
ECBの役員たちはこういった両面から総合的に判断し、最終的に決
めたことだろうが。


しかし最後の砦として、近々スペインの救済が本格的にやってくる。
利上げによってこの国の危機を一層早める可能性が高いのだ。
スペイン経済の規模は他の3ヶ国の比ではない。
万が一ギリシャアイルランドポルトガルと同じように救済となれば
その影響は計り知れない。
またここへきてギリシャの債務編成問題がクローズアップしてきた。
これがさらにスペイン危機を加速させていくだろう。


ECBは米国FRBほど国債の買い取りは行っていない。
まだまだ買い取り余地があることは確かである。
しかし一定の規模を買い取っても、再び次から次へと波及していくこと
は間違いないし、そういったことは役員たちも承知している。
だから一度に大量の国債を購入せず、これからもジワジワと増やして
いくという魂胆だ。
米国ではギリシャの再編は望んでいないだろう。
もし再編となれば、第2のギリシャ・ショックといった規模を超えて、
第2のリーマン・ショックになりかねないからだ。
最も被害を被る企業といえば、米国に本部がある世界的な投資銀行
であることは間違いない。



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